当日朝、前日までの雨が一変し、すがすがしい青空が広がっていた。瀬戸内海は、日本のエーゲ海とも言われるだけあり、直島からの眺めは特に絶景で、県下各地から集まった参加者(70人)は終始美しい景色を賛美していた。
10年ほど前までは、直島といえば、三菱マテリアルの精錬所の町というイメージが強かったが、今ではアートを活かした街づくりが進み、その知名度は、海外の旅行誌にも掲載されるほどである。
なぜ直島がアートを活かせる場所として選ばれたのか。それは、元直島町長である故三宅氏をはじめとする地元の熱い思いと福武書店(現:ベネッセコーポレーション)の先代社長、故福武氏との出会いから始まったことがわかった。
三宅氏は、昭和34年から9期にかけて直島町長を務めた人物で、昭和35年には、すでに、島を3つのゾーンに分け、それぞれの特色を持たせる開発計画を発表していたというからすごい。その3つとは、三菱マテリアルを中心とした産業エリアの北部、生活・教育エリアの中央部、そして文化・リゾートエリアの南部である。この南部が現在のベネッセアートサイト直島にあたる。
今回は、自然とアート、建築の共生をテーマとしたベネッセハウス、新しい概念の地中美術館、そしてすでにあるものを活かして残すという試みの「家プロジェクト」の3つを視察研修した。
参加者の中には初めて訪れる方、リピーターの方もさまざまだったが、直島がなぜアートで発展したのか、その歴史や背景を学ぶとても良い機会となり、有意義な視察研修となった。
アートとの共生は、自分たちの暮らす街においてもそんなに難しいことではない。発想の転換ひとつで、これまで街の中に自然にあったものに手を加えることにより、街全体がいきいきとよみがえる。そうしたことをきっかけに、街の歴史や文化を大切に保存され、次世代に継承できるようになるのである。そして多くの人が訪れるようになれば活気も取り戻せるのだということをあらためて実感した。
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